映画『恋の渦』を見た。
大根仁の最新作、『恋の渦』を見に行きましたー。
誰かとお酒を飲みながらくっちゃべりたくなる作品でした。
正直、最初の数十分、登場人物9人全員が集まる場面では、
う、わぁ……なんだこのアニマルプラネット…
いやぁ、無理。
むりむり、受け付けないわ……
と、怖気ついたのですが、
そこから先ですよ、面白くなったのは。
家飲み解散後、それぞれが帰宅してほどなく…、
「ぶっ!」
そこ、持ち帰ったんかーーい!
ムツゴロウ「これは交尾の機会をうかがってるんですねー」「群れではそうは見えなかったでしょお。そーんなことなかったんですねえ」「あーーいまチャンス逃しましたね~」「慣れないとこうなるんですねぇぇ」
どこからか聞こえるムツゴロウの声。
そうさこの世はアニマルプラネット。
気づけば、コントを楽しむように、
登場人物の気持ち悪さを楽しめるようになってました。
ぷぷぷと笑いながらも、次々に追加される情報によって、
立体感をおびてくるそれぞれのキャラクター。
いや~な部分、弱さが丸見えで、なんだかだんだん愛着がわいてきている自分に気づきます。
「こいつってこうだよな~」と、自分の解釈を語りたくなるというか。
大根仁監督の最新作「恋の渦」、映画モテキから洋服をはぎとって、生々しく生々しーく、臭みたっぷりにお届けって感じ。
— なな・ふっかふか (@7_fuka) 2013, 3月 30
↑見た直後の感想ツイートだけれど、
『モテキ』も人と語り合いたくなる映画だったんですね。
「あの時の表情どう思った?」とか「このシーンにえぐられた!」とか。
『恋の渦』は群像劇なので、主人公1人対女の子4人(というか実質2人)のモテキよりも、観測ポイント、心にひっかかるフックが多いんじゃないかな。
9人いれば9通りのエゴの発揮方法があって、
組み合わせによってエゴのぶつかり合いにもバリエーションが見られる。
私はここに引っ掛かったけれど、他の人は全く気にならなかったかもしれないし、
逆に、私がスルーしたところに引っ掛かりまくっている人もいるんだろうなあと。
『モテキ』には、恋愛以外にも仕事のことや音楽のことが入ってたり、
見慣れたきれいな芸能人たちの安心して見れる演技があるので、
おしゃれカジュアルな洋服を着てる印象ですが、
『恋の渦』は、その洋服はぎ取って、生々しい裸をさらしてる感じ。
役者がみんな無名で、ワークショップから選ばれたということと、
舞台が4つの部屋のみで、映画全体が密室の空気に包まれているということからくる生々しさなのかなと。
それにしてもこいつら、エゴのぶつけ合い、奪い合いしかしてないなあ。
仕事ちゃんとしてんのか?
(……あ、1人いたね。ちゃんと仕事してたのが最後にわかる人が)
以下は、ネタバレ感想
個人的にぐっときたのは、
最後、ボス猿にべったり依存女が、新しい彼氏つれてきたところ。
アニマルプラネットの中に突如として現れるジャパニーズサラリーマン!
これまで、この世界で聞かれることのなかった言葉が放たれる
「大人なんだから」
お、おとな? この世界では、全く思いもつかなかったこの概念…!
ボス猿はこの仲間内でのみボスなのであって、
外からみたら単なるフリーターなのは観客もわかっているのだが、
このサラリーマンの投入で、それがみじめーな絵となって強調される。
しかも、とどめに
元彼女「出会い系のサクラっているでしょう? この人それやってんの」
である。
その前のシーンで発覚した、ボス猿の弟くんカップルの妊娠と、
あと、田舎者KYくんの母親の病気も合わせて(この、「KYくん、東京を去る」だけはじいんとした。ここだけがこの映画の良心やで…)
箱庭でぎゃーぎゃー騒いでる猿たちに、急に「社会」が殴りこんでぶっ壊していったよう。
と言っても、依存女は依存先をボス猿からリーマンに変えただけだし、
彼女の妊娠が発覚しても、弟君が浮気をやめることはない。
カオスはまた別のカオスに変わるだけ。
それでも、しょうがないよねえ。
と、人間のどうしようもないダメさをあきらめて笑うしかない。
ひとまずこのコミュニティはこれでおしまい。
解散後も、彼ら彼女らそれぞれの混乱は終わることがないでしょうけれど、
私たちはここでお別れです。
さよーならー。